個別支援計画づくりは、アセスメントを読み返し、目標を言葉にし、文章を整える——時間も神経も使う仕事です。「もう少し早く下書きができたら、本人と話す時間が増えるのに」。そう感じたことがあるなら、生成AIが力になる場面があります。
ただし、扱うのは利用者の大切な情報。やり方を間違えると、個人情報の面でも、計画の質の面でもリスクになります。この記事では、リスクを抑えながら実用的にAIで下書きを作る手順を、プロンプト例つきで解説します。
この記事でわかること
先に結論
AIは「下書き」に使える
素案づくり・文章の整え・抜け漏れの観点出しなどを補助できます。適切な条件で使えば、ゼロから書く負担を軽くできる場合があります。
個人情報はそのまま入れない
氏名を置き換えただけでは不十分。再識別できる情報が残れば個人情報として扱い、実データは原則、法人が承認した環境で必要最小限に。
判断と確定は人
アセスメントの判断・本人の意向確認・最終確定は人が行います(最終責任は作成者)。
01 / WHERE AI HELPS
大切なのは、AIに「判断」をさせるのではなく、「下書き・整理」を手伝ってもらう、という線引きです。個別支援計画づくりのうち、AIが補助しやすいのは次のような部分です。
素案づくり
アセスメント情報(匿名化済み)から、目標・支援内容のたたき台を作る。
文章を整える
箇条書きのメモを、読みやすい文章や定型の言い回しに整える。
抜け漏れの観点出し
「この観点が抜けていないか?」のチェックリストづくりを補助。
要約・言い換え
長い記録の要約や、本人・家族向けのやさしい表現への言い換え。
逆に、本人の状態の見立て(アセスメントの判断)や、本人・家族との合意形成は、AIには任せられません。詳しくは第6章で整理します。
02 / SAFE STEPS
流れはシンプルです。「匿名化 → 指示 → 下書き → 人が確認・確定」。この順番を守ることが、安全に使うコツです。
氏名・住所・固有の事情など、個人を特定できる情報を外す(例:氏名→「利用者A」、地名→「X市」)。
「誰の・何を・どんな形式で」を明確に。匿名化した情報と、出力してほしい項目を渡す。
たたき台を生成。足りなければ「もっと具体的に」「短く」などで調整する。
事実誤り・本人の状況や意向との整合を必ず確認。確定は作成権限のある方が行います(最終責任は作成者)。
03 / DEMO
実際の流れを、架空の仮想ケースで見てみましょう。
匿名化して指示する
「就労継続支援B型に通う利用者A(30代)。作業中の集中が続きにくい。本人は『自分のペースで働きたい』と話している。長期目標・短期目標・支援内容の素案を、本人の強みを活かす視点で3案、箇条書きで出してください。」
AIの下書き(たたき台)※抜粋イメージ
長期目標(案):自分に合った作業ペースを見つけ、無理なく継続して通所できる。
短期目標(案):「45分作業+10分休憩」のリズムを2週間試し、体調を記録する。
支援内容(案):作業前に体調・気分を本人と確認/集中が切れたら休憩を促す声かけ/週1回、本人と振り返り。
人が確認・修正して確定(最終責任は作成者)
本人の実際の発言・アセスメントと照らし、事実誤りや意向とのズレがないかを確認。表現を整え、修正して確定します。担当者会議・本人や家族への説明と同意は、これまでどおり人が行います。
※ 研修用の架空ケースです。実際の利用者情報は匿名化し、AIサービスのデータ取り扱いを確認のうえ、法人が承認した環境で必要最小限に。生成された内容は必ず人が確認・修正します。
04 / PROMPT
AIへの指示は、次の4要素を意識すると、出力が安定しやすくなります。難しく考えず、「人に頼むときと同じ」と考えると分かりやすいです。
① 指示
何をしてほしいか(例:「個別支援計画の長期目標の素案を3案」)。
② 文脈
匿名化した状況(例:「就労継続支援B型・30代・利用者A」)。
③ 例示
望ましい書き方の例を1つ渡すと精度が上がりやすい。
④ 出力形式
「箇条書きで」「200字で」など形式を指定。
プロンプト例(※すべて匿名化・仮想ケース)
「就労継続支援B型に通う利用者A(30代・作業中の集中が続きにくい)について、個別支援計画の長期目標・短期目標・支援内容の素案を箇条書きで。本人の強みを活かす視点で、3パターン出してください。」※ 上記は研修用の架空ケースです。実際の利用者情報は、法人が承認した環境で必要最小限に。生成された内容は必ず人が確認・修正します。
05 / IMPORTANT
障害の有無・障害特性・障害福祉サービスの利用歴などは要配慮個人情報に該当し得ます。さらに、生活歴・支援経過・事業所種別などの組み合わせから個人が推測される場合もあります。次を必ず確認してください——法人の利用ルール/本人・家族の同意/AIサービスの規約・プライバシーポリシー/入力が学習に使われない設定/入力ログの扱い。判断に迷う場合は、実データを入力しないのが安全です。
個別支援計画は、指定基準等で、アセスメント → 計画案 → 担当者会議 → 本人への説明と同意 → 交付 → モニタリング → 見直し → 記録の保管、といった流れが求められる手続きです(児童・代理権者・成年後見人等が関わる場合は、制度と本人の意思決定支援に沿って対応します)。AIが補助できるのは各場面の「下書き・整理」まで。会議・説明・同意・モニタリングは人が行います。
参考:要配慮個人情報の考え方は、個人情報保護委員会 のガイドライン等もご確認ください。
06 / DO NOT
アセスメントの判断
本人の状態や必要な支援の見立ては、専門職が行います。
本人・家族の意向確認
合意形成は人と人で。AIの素案を押し付けない。
内容の最終確定
確定はサービス管理責任者・児童発達支援管理責任者など作成権限のある方が行います。
個人情報のそのまま入力
匿名化が前提。サービスのデータ取り扱いも要確認。
07 / PITFALLS
そのまま提出してしまう
→ AIは事実誤りを含むことがある。必ず人が確認・修正してから確定。
個人情報を入れてしまう
→ 入力前に匿名化。事業所のルールと、サービスの設定を整える。
抽象的な指示で精度が出ない
→ 指示・文脈・例示・出力形式を具体的に。少しずつ調整する。
こうした手順や安全な使い方を、仮想ケースで体系的に学べるのが WelvieAI の研修です。
資料を見てみる08 / SUMMARY
流れは「匿名化→指示→下書き→人が確認」。この順番を守ると、リスクを下げながら下書き作成に使いやすくなります(実データの投入は、法人ルールと利用サービスの契約・設定の確認が前提)。
指示は4要素で具体的に。指示・文脈・例示・出力形式を意識すると、下書きが安定しやすくなります。
判断と確定、個人情報の管理は人。AIはあくまで補助役です。
AIで何ができるかの全体像は、障がい福祉でAIは何ができる? でも整理しています。あわせてご覧ください。
09 / FAQ
AIは「下書き(たたき台)」の作成に使えます。アセスメントの判断、本人・家族の意向確認、内容の最終確定は人(サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者など作成権限のある方)が行います。最終責任は作成者にあります。
そのまま入力するのは推奨しません。匿名化・仮名化(例:氏名→「利用者A」)し、AIサービスの規約とデータ取り扱い(入力が学習に使われない設定の有無)を確認したうえで運用してください。障害の有無・障害特性などは要配慮個人情報に該当し得るため、特に慎重に扱います。
そのままは使えません。AIの出力は下書きで、事実誤りや不適切な表現を含むことがあります。必ず人が確認・修正し、本人の状況や意向に合っているかを確かめてから確定します。
ChatGPTなどの汎用の生成AIで始められます。無料版は研修用の架空ケースで試す範囲にとどめ、実データを扱う場合は、法人契約か、学習利用の有無・保存期間・国外移転・管理者設定などを確認してください。実際の利用者情報は匿名化し、法人が承認した環境で必要最小限に使うことを推奨します。
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