「AIが便利らしいのは分かった。でも、うちの現場では結局、何に使えるの?」——障がい福祉の事業所で、いちばん多い疑問かもしれません。ツールの名前だけ聞いても、日々の記録や計画づくり、加算の事務にどう当てはめればいいのかは、なかなかイメージしにくいものです。
この記事では、障がい福祉の業務を「計画・記録」「申送り・会議」「加算・事務」「広報・運営」の4分野に分け、業務×ツール別に16の使いどころを事例・アイデアとして整理しました。あわせて、安全に使うための「型」もお伝えします。
この記事でわかること
先に結論
まずは「文章・要約・整理」から
下書きづくり、長い記録の要約、情報の整理——ここから効果を検証しやすい傾向があります。特別なシステムがなくても、今ある生成AIから始められます。
用途でツールを使い分ける
下書き・要約は生成AIチャット、会議の書き起こしは音声入力、おたよりは画像・デザイン系。適材適所が近道です。
安全の型を最初に決める
個人情報は原則入力しない・最終確認は人。この2つを最初に決めておけば、リスクを下げて幅広く試せます。
01 / OVERVIEW
AIが力を発揮しやすいのは、「毎回ゼロから文章を起こす」「長い記録を読み返して要点をまとめる」「バラバラの情報を並べ直す」といった、時間はかかるが定型的な事務です。逆に、支援方針の判断や本人・家族との関わりは、これからも人の仕事です。
そこで本記事では、事業所の業務を次の4分野に分けて、使いどころを具体化していきます。気になる分野から読み進めてください。
計画・記録
個別支援計画・モニタリング・支援記録・アセスメントの下書きと整理。
申送り・会議
申送り・議事録・日報の要約と清書の下書き。
加算・事務
確認観点づくり・整理の補助(制度の正誤は人が最新情報で確認)。
広報・運営
おたより・掲示物・求人票・研修資料などの下書き。
02 / PLAN & RECORD
もっとも事務負担が大きく、AIの下書きが役立ちやすい分野です。いずれも個人情報を含まない仮想ケースで使い、出力は下書き(たたき台)として人が確認・修正します。
本人の強み・意向のメモ(匿名化)を渡し、長期・短期目標と支援内容の案を複数出させる。人が本人の実像に合わせて選び・整えます。
期間中の様子メモから、目標の達成状況・次の見直し案の下書きを作る。表現の統一にも役立ちます。
その場で話した支援の様子を音声入力し、読みやすい記録の下書きに整える。書く時間を後回しにしません。
集めた情報を項目別に並べ直し、「確認が薄い観点」を挙げさせる。聞き取りの準備に使えます。
個別支援計画にしぼった手順は、個別支援計画をAIで作る手順 でくわしく解説しています。
03 / HANDOVER & MEETING
「話したのに、書くのが後回し」——申送りや会議の記録は、まさにAIの得意分野。要点の要約と清書の下書きで、記録作成時間の短縮につながる場合があります。
断片的なメモを、次の担当者が読みやすい申送りの下書きに。要点と注意点を分けて整理します。
録音の文字起こし(匿名化)から、決定事項・宿題・次回予定を抜き出した議事録の下書きを作成。
箇条書きのメモから、共有しやすい日報・週報の文章に。トーンをそろえられます。
起きたこと・要因・対策の観点で情報を並べ直し、再発防止の検討メモの下書きに(判断は人)。
04 / OFFICE & ADDITIONS
加算や制度に関わる事務は、AIの下書き・整理が役立つ一方で、要件の正誤はAIに任せてはいけない分野です。制度情報は必ず最新の一次情報で人が確認してください。
注意:加算の算定要件・報酬告示・自治体ルールは改定され、AIは古い情報や誤った内容(ハルシネーション)を含むことがあります。要件の判断・確定は、必ず最新の一次情報(厚生労働省・自治体の通知等)と、権限のある担当者で行ってください。
自分たちで用意した要件メモをもとに、確認すべきチェック観点の下書きを作る(要件そのものは人が最新情報で確認)。
手元の数値の並べ替え・集計手順の説明・計算式の考え方などを補助(数値の正しさは人が検算)。
運営指導の準備で、自分たちの規程・記録を見直す観点を洗い出す下書き(最終判断は人)。
読み込みに時間のかかる通知やマニュアルを、要点の下書きに要約(重要判断は原文で確認)。
05 / PR & OPERATIONS
利用者情報を扱わないぶん、いちばん気軽に試せる分野です。「作るのに時間がかかっていたもの」を下書きから任せてみましょう。
季節のあいさつ・行事案内などのたたき台。読みやすい表現に整えます。
事業所の魅力を言語化し、求人原稿の下書きに。表現の候補を複数出せます。
新人向け説明資料の構成案・たたき台づくり。抜けがちな観点も洗い出せます。
関係機関・保護者への連絡文のたたき台。丁寧なトーンにそろえられます。
06 / MATRIX
「どの業務に、どのタイプのツールが向くか」の早見表です。まずは自分の業務の行を見て、○のところから小さく試すのがおすすめです。
| 業務 | 生成AI チャット |
音声入力 文字起こし |
画像・ デザイン |
表計算 の補助 |
|---|---|---|---|---|
| 個別支援計画の下書き | ◎ | ○ | — | — |
| 記録・モニタリング | ◎ | ◎ | — | — |
| 申送り・議事録 | ◎ | ◎ | — | — |
| 加算・事務の整理 | ○ | — | — | ○ |
| おたより・掲示物 | ◎ | — | ◎ | — |
| 求人票・募集文 | ◎ | — | ○ | — |
※ ◎=特に向く/○=使える/—=主用途ではない、の目安です。ツールの機能は日々進化しており、区分は一例です。具体的なツール名・料金は各提供元の最新情報をご確認ください。
07 / SAFE RULES
どの事例も、次の3つを守れば、リスクを下げて始められます。障がい福祉では、障害の有無・障害特性・サービス利用歴などが「要配慮個人情報」に該当し得るため、特に個人情報の扱いが大切です。
やむを得ず検討用に使う場合も、氏名の置換(例:氏名→「利用者A」)だけでなく、地域・生活歴・家族構成・通所履歴など再識別につながる情報も削る。なお、こうした置換は便宜上のマスキングであり、個人情報保護法上の匿名加工情報・仮名加工情報に当然に該当するものではありません。録音・文字起こしを行う場合は、利用目的・保存先・保存期間・共有範囲を事業所内ルールで定め、必要に応じて本人・家族等への説明を行ってください。
入力内容が学習に使われない設定にできるか、ログの扱いはどうかを確認する。
記録・計画・制度に関わる内容は、作成権限のある方が確認・修正・確定する。AIが出すのは下書きまでです。
参考:要配慮個人情報の考え方は、個人情報保護委員会 のガイドライン等もご確認ください。
08 / SUMMARY
使いどころは4分野・16の事例。計画・記録/申送り・会議/加算・事務/広報・運営で、まず「下書き・要約・整理」から。
ツールは用途で使い分け。マトリクスの◎から、身近な1業務で小さく試すのが近道です。
安全の型は最初に。匿名化・規約確認・最終確認者。ここを決めれば安心して広げられます。
「何ができるか」の全体像は 障がい福祉でAIは何ができる?業務別ガイド に、研修サービスの選び方は 障がい福祉のAI研修 比較・選び方 にまとめています。自分たちの現場に合わせて“使いこなす”段階まで進みたいときは、特化型の研修という選択肢もあります。
09 / FAQ
文章を作る・要約する・情報を整理する事務が中心です。個別支援計画やモニタリング記録の下書き、申送り・議事録の要約、アセスメント情報の整理、おたより・掲示物・求人票の下書き、加算事務のチェック観点づくりの補助などに使えます。AIが返すのは下書き・補助までで、内容の確認・修正・確定は人(有資格者・担当者)が行い、最終責任は作成者が負います。
用途で分かれます。文章の下書き・要約は生成AIチャット、会議や申送りの書き起こしは音声入力(文字起こし)、おたより・掲示物は画像・デザイン系ツール、といった使い分けが基本です。まずは1つの業務で、無料または既存の環境から小さく試すのがおすすめです。
そのまま入力することは推奨しません。氏名・地名などは匿名化・仮名化(例:氏名→「利用者A」)し、利用するAIサービスの規約とデータの取り扱い(入力が学習に使われない設定の有無)を確認したうえで運用してください。障害の有無・障害特性・障害福祉サービスの利用歴などは要配慮個人情報に該当し得るため、事業所内の利用ルールの整備も推奨します。
そのままの利用は避けてください。AIは誤った内容(ハルシネーション)を含むことがあります。加算要件など制度に関わる情報は必ず最新の一次情報で確認し、記録・計画は作成権限のある方が確認・修正・確定してください。
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